
136回目の今日お届けしたのは、「LOOK/シャイニン・オン 君が哀しい」でした
「彼らと初めて会ったのは、1984年の夏頃だったと思います。当時のマネージャーが送ってきたデモテープを聴いて、興味を持った僕は、東京・目黒のライブハウス「鹿鳴館」に彼らのライブを観に行ったんです。ボーカルの鈴木トオルのアイドル的なルックスと、高音でハスキーなボーカル。そんな鈴木とは対照的な、千沢仁のボーカルと、ハーモニー。さらには、千沢が作り出す多彩なメロディ。多面的な要素を持った彼らは、それまで僕が見たことのないタイプのバンドで、実に斬新。ぜひ彼らをデビューさせて、多くの人達に知ってもらいたいと、僕は直ぐに思ったんです」。
デビュー当時、LOOKの制作担当ディレクターを務めた山本さんは、当時についてこう振り返ります。
1984年、東京・新宿のライブハウス「ACB」を拠点に、別々のバンドで活動していた4人の男達。AC/DCやSLADEといった、ハードロックバンドに影響を受けていた、ボーカル兼ギターの鈴木トオル。BILLY JOELなどのシンガーソングライター系のメロディメイカーに影響を受けていた、ピアノ兼ボーカルの千沢仁。パンク・ジャズバンド出身の、サックスのチープ広石。そして、プログレッシブ・バンドのドラマーとして活躍していた、山本はるきち。音楽のバックボーンが、全く異なる4人の男達は、売れるバンドを作ることを目的に意気投合し、新たなバンドを結成します。
4人のそれぞれの異なるキャラクター性を、いい意味でのバンドの魅力と捉えた彼らは、当時、4つの味が一つのパッケージで楽しめることで人気を集めていたチョコレートとオーバーラップさせて、バンド名を"LOOK"と名付けます。
「デモテープを聴き、ライブを観た僕は、メンバーが、同じ4人なので、ビートルズを意識し、彼らを目指すことにしたんです。バンドとして、しばらく活動した後は、ビートルズにならってメンバー個々のソロを視野に入れた活動を行っていくことも考えていました」。
こうして、1984年冬にエピックレコードと契約したLOOKは、翌1985年の春にデビューすることが決まります。
「LOOKは、千沢仁がメロディを書き、作詞をチープ広石が担当、そして山本はるきちが編曲を担当する―といったように、役割分担がはっきりしていたバンドなんです。普通バンドは、メンバーそれぞれが、あれこれ意見を出し合って曲を作っていくケースがほとんどですが、彼らの場合は作詞、作曲、編曲は完全分業制で、それぞれが責任を持ってプロフェッショナルな仕事をしようというのが特徴でした。その中でも、それぞれの基本に考えていたのは、ボーカル・鈴木トオルの高音ハスキーボイスを活かすために、どうすればいいのか。これだけを、それぞれが共通テーマとして、持っていたんです」。
「僕は、彼らと色々と話をする中で、鈴木トオルの高音でハスキーな歌声と、王子様的なキャラクターは、LOOKの強力な武器になると考えたんです。そこで、LOOK結成前のバンドでは、ギター兼ボーカルだった鈴木を、LOOKではボーカルとして専念させることにしたんです。
もともとハードロック系のギター小僧だった鈴木は、ハードロック以外の、ジャズ、プログレの要素を取り入れたLOOKの多様な音楽性を上手に弾き分けるほど器用ではありませんでした。ライブを積み重ねていく中で、鈴木自身、ギターとボーカルを両立させることが難しいことも実感していたと思うので、この提案に対しては割とすんなりと受け入れてくれたんです」。
デビューに向けて、着々と準備が進んでいく中で、LOOKは、彼らがアマチュア時代に作っていた「SMILE AGAIN」を、1stシングルの候補曲として決めます。
LOOKが、1985年4月に発売する1stシングルとして、準備していた楽曲「SMILE AGAIN」。
「LOOKは、メンバー4人がアマチュア時代に培ってきたハードロックやジャズ、プログレの要素を取り入れた、本当にバラエティに富んだ音楽性を持っていたので、僕ら制作スタッフは、デビュー後の展開方法を色々と考えて、徐々にその全貌を見せていく作戦を立てていたんです。そこでまず1stシングルとして選んだのが、ポップで明るい「SMILE AGAIN」という曲でした」。
「ところが、レコーディングも無事に終えた後、レコード会社の宣伝や営業チームと打合せする中で、LOOKの1stシングルは、ポップで明るい曲ではなく、当時から関係者の間では人気を集めていたバラード曲にして欲しいという意見が数多く寄せられたんです。メンバーも、僕ら制作スタッフも、土壇場での変更に困惑したんですが、宣伝や営業チームと幾度となく議論を交わし、結局、1stシングルを変更して、バラード曲で勝負する作戦に切り替えたんです」。
「もともとこの曲は、彼らがアマチュア時代から歌っていた曲で、僕が目黒のライブハウス「鹿鳴館」に彼らのライブを初めて観に行った時にも、歌っていたんです。バラード曲は、じっくり聴かせるというのが普通なんですが、この曲は、曲が最初からドラマティックに展開していくので、思わず聴き入ってしまうんです。そして何より、鈴木トオルのサビのボーカル力が衝撃的で、初めて聴いた時は鳥肌が立ちました。曲を作った時の話を詳しく聞いてみると、最初は曲を作った千沢がボーカルを担当する予定だったけど、曲のレンジ(音の高低差の幅)が広く、千沢では歌いきれなかったので、試しに鈴木が歌ってみたら、歌のキーが出たので、そこから鈴木がメインで歌うようになったんだそうです」。
こうして1985年4月、当初の予定を変更したLOOKの1stシングル「シャイニン・オン 君が哀しい」は、発売されます。
1985年4月に発売された、LOOKの1stシングル「シャイニン・オン 君が哀しい」は、セールスチャート最高位8位、約35万枚の売上を記録します。
「キャラクターも、音楽性も違う4人の魅力が、高度なポップナンバーに融合することで、最大限発揮された曲です。
その一方で、曲の持っているインパクトがあまりにも大きく、その結果、彼らはそれ以降どんな曲を書いても、思うような評価を得ることができず、この曲のために、本人達も苦しんだ部分があるのも事実です。結局、彼らにとってこの曲は、最後まで越えることができない、大きな壁になってしまいました。しかし、サビのメロディが、この曲を聴いた人達の記憶の片隅に深く刷りこまれ、今でも、カラオケなどを通して、幅広い人達にこの曲を歌ってもらえているのも事実です。
本人達は越えることができなかったけど、曲としては"時代の壁"を大きく乗り越えて、J-POPの歴史にその名前を刻んだのではないでしょうか」。
最後に、制作ディレクターを務めた山本さんは、こう語ってくれました。
時代という大きな壁を乗り越え、歌い継がれるJ-POPバラードの名曲が生まれた瞬間でした。
今日OAした曲目
M1.Get Down And Get With It/SLADE
M2.SMILE AGAIN/LOOK
M3.シャイニン・オン 君が哀しい/LOOK